qその2

青年は、同じ名字ということに親近感を覚え、非番のときに個展を見に行きます。どうやらあのおじいさんの個展のようです。思い切って話しかけました。なぜなら、青年は美大の油絵専攻に所属しており、この個展も油絵がメインだったのです。

青年は、この絵はどこで描いたのか、いつ描いたのかなど、おじいさんがこれらの絵にこめた様々な物事を知ろうと色々な質問をしました。しかし、おじいさんはそれを絵をみて感じてほしかったので
「絵をみなさい」
としか言いません。
らちがあかないと思った青年は次のアルバイトの日、見回りの合間におじいさんの絵をひたすら見てまわります。すると見覚えのある絵が一つありました。
「これって花咲港?」
北海道のある小さな港の車石という大きな岩の絵でした。しかし青年が知っている車石とはずいぶん面影が違います。けれど岩が丸い形をしている様子はとても似ていました。題名は「無題」、確信はなかったけれど青年はインターネットでおじいさんのメールアドレスを探しメールを送りました
「個展で色々な質問をした者です。あの「無題」という題名の絵は車石ですか?」

続く。