「最近、いつ泣いた?」
「おじいちゃんが死んだときかな」
「それっていつ?」
「高2」
「せかちゅーみた?」
「みてない」
「泣けるらしいよ」
「ハードカバーなら読んだ」
「話けっこう違うんだって」
「世界の中心じゃないけどある場所で愛を叫んだことならある」
「どこどこ?」
「桂木浜」
「どこ?」
「実家のすぐそばにある。根室
「いつさ?」
「進学で東京行くこと決まって、そのときの好きな人が浪人で根室に残るってわかったときに」
「なんて叫んだの?」
「内緒♪」
「いいじゃん、教えてよ」
「じゃあいいじゃん、教えなくても♪」
「あんまり自分の殻に閉じこもりすぎるとよくないって」
「確かにそうだけど、今回の内容の中では適当じゃない気がする」
「いや、気になるんだよ。夜も寝られない」
「今日の夜になってみないとわからないじゃないか」
「それくらい、教えてくれってこと」
「仕方ないな」
「お!やった!さぁ!どうぞ!」
「高校一緒でいつも顔あわせて塾も一緒なんだ」
「は?それ言ったの?」
「いや違う、そういう環境で高校過ごしてきて19の春からは1500キロ離れてしまうんだよ。あんな近くにいたときでさえまともに話せなかったのに、1500キロだよ。どうするんだよ」
「で?なんて言ったの?」
「まぁ待てって。片田舎のガキだから視野が狭いんだよ。今だったら1500キロなんて半日分しか離れてないって思えるけどその頃はもう一生会えないみたいな距離なんだよ」
「極端だけどお前の性格からわかる気がする。でさーもったいぶらないで、ね。」
「桂木浜は根室半島の南側だから自動的に東京の方角を向くことになるんだ。で、そっち向いて」
「お!そしてそして?」
「こっち向けーって叫んだ」
「・・・は?」
「未来の自分に。東京は時々方角わからなくなるから」
「そっか。」
「なんだよ、面白くないって?世の中ドラマみたいなことなんてあるわけないじゃん」
「いや・・・」